強みを生かして回復するということ

ここでは、ACTを実施する時にわたしたちが大切にしている「リカバリー」と「ストレングス」という概念についてご紹介します。

ACTが目指す「リカバリー」とは?

みなさんは「リカバリー」という言葉から何を連想されるでしょう。回復すること? 病が治り症状が全く出なくなること? 治療が必要でなくなること?
ACTにおける「リカバリー」は、少し意味がちがいます。「リカバリー」とは、ACTのプログラムを利用する障がい者が希望や自尊心を取り戻し、可能な限り自立した生活をおくること、社会への貢献を学ぶことを意味しています。健康な方にはそれほど難しくないように思えるかもしれません。けれど、障がいをかかえる方にとってはとても難しいことです。ACTは、障がい者が「リカバリー」を実現することを目標としています。

ACTが目指す「リカバリー」
1. 障がい者が希望をもつこと

薬を飲めば楽になる/自分らしい生活を取り戻せる/立ち直ることができる…etc.

2. 障がい者が自分の病気に自分の意志で取り組む力をつけること

病気や薬についての情報を知る/暮らしやすくする工夫を考える/同じ経験をもつ仲間と協力する…etc.

3. 障がい者が自分に責任をもつこと

小さな失敗をおそれない/サポートを受けながら何かに挑戦する/サポートする人とのいい関係をつくる…etc.

4. 障がい者が社会の中で意味のある役割に就くこと

仕事に就く/人と愛し合う/家族との関係をよくする/生きがいをもつ…etc.

 

障がい者自身がもつ「強み」に注目する

この「リカバリー」を実現するため、ACTでは「障がい者自身が上手くできること」「障がい者自身の良いところ」に注目して、伸ばすことに努めます。このような強みを「ストレングス」と呼びます。たとえ精神疾患をかかえる方であっても、すべての人には必ず何らかの「ストレングス」があります。
「ストレングス」には4つの種類があります。(1)性格(2)才能や技能(3)望みをかなえるために役立つ環境(4)頑張る動機になるような関心や願望です。

4つのストレングス(例)
性格 技能/才能 環境面の
ストレングス
関心/願望
・正直
・思いやりがある
・希望を持っている
・勤勉
・親切
・我慢強い
・繊細
・話好き
・気さく
・世話好き
・計算に強くお金の支出を管理できる
・車関係の仕事
・花をいける
・コンピューターの達人
・イギリスのロックミュージシャンに関する知識が豊富
・記憶力がよい
・安全な住居がありとても気に入っている
・兄
・犬のモモちゃんは大親友
・2年前地域の振興グループに参加していた
・両親
・釣りが大好き
・アイドルになりたい
・テレビで古い映画を見るのが好き
・喫茶店に行って時間を過ごすのが好き
・近い将来、車の免許を取りたい
(出典:伊藤順一郎 演習『ストレングスモデルのケースマネジメント』)

ACTでは、この「ストレングス」を活用しながら、障がい者一人ひとりが自分の望むことを実現できるよう手助けをします。もっている強みを生かすことで、障がい者自身も「上手くやれた」と実感できることが増え、「リカバリー」へと進むことができます。

 

「リカバリー」の旅へ共に歩む

「リカバリー」はよく「旅」にたとえられます。次の文章は、心理学博士であり、自らも統合失調症をわずらいながら、当事者研究の先頭にたって「リカバリー」という概念の普及に努めている、パトリシア・ディーガンの言葉です。

リカバリーは旅(過程)であり、生き方であり、構えであり、日々の挑戦の仕方です。平坦な一本調子の直線的な旅(過程)ではありません。ときに道は不安定となり、つまずき、旅の途中で止まってしまうこともあります。けれど、気を取り直してもう一度はじめることもできるのです。この旅で必要とされるのは、障がいへの挑戦を体験することです。障がいによる制限の中、あるいはそれを超えて、健全さと意思という新しく貴重な感覚を再構築することなのです。リカバリーの旅で求めている事は、地域の中でふつうに暮らし、働き、愛し、そこで自分が重要な貢献をすることなのです。(Deegan,1996)

わたしたちは、この長い旅路を歩む障がい者を、旅の同伴者として支えていきたいと考えています。また、同じ地域に住むたくさんの方が、彼・彼女たちの旅を見守り、手助けし、同伴者となってくださればと願っています。