ACTのはじまりとACTIPSの成り立ち

ACTとは?

「ACT」とは「Assertive Community Treatment」の略で、重い精神障がいを抱える人たちが、住みなれた地域で安心して暮らしていけるような支援を行うプログラムです。私たちは「包括型地域生活支援プログラム」とも呼んでいます。

対象となるのは、統合失調症や躁うつ病などの精神障がいをもつ人たちのうち、治療によっても十分に改善されない重い症状や障がいを持っていたり、そうした障がいに関連した理由により、現在の地域精神保健サービスでは十分でないといわれる人たちです。

ACTは1960年代後半に、アーノルド・マークス博士、レオナード・スタイン医学博士、マリー・アン・テスト臨床心理学博士により米国のウィスコンシン州マディソン市で開発されました。その後全米各地に広がり、今では欧米を中心に世界中で実施されています。たくさんの研究結果を見ると、ACTは標準的な精神保健サービスよりも、入院期間を減らし、地域での生活を安定させる効果が高いことが明らかになっています。また、生活の質や精神症状、利用者とその家族の満足度などに関しても一定の効果が上がること、さらに従来のサービスに比べて医療経済学的にもよい結果が得られることが示されています。


ACTの特徴

ACTには以下の大きな特徴があります。

1. 支援を行うチームは、医師からソーシャルワーカーまでさまざまな職種の専門家で構成されます。これによって、ばらばらになりがちな医療サービスと福祉サービスの両方を一緒に提供できます(スタッフ紹介)

2. 障がい者のもつ良いところ(ストレングス)に注目して、それを伸ばすような支援方法を考え、障がい者が希望をもち自立した生活を送ることができるようにします(リカバリー)
そのほか、以下の特徴をそなえています。

ACTの大きな特徴

・10名程度のスタッフに対し100人程度の利用者を上限とする
・チーム全員がすべての利用者について十分な知識をもって支援する
・スタッフは利用者が生活している場を訪問して相談や支援をする
・1日24時間/週7日体制・必要な保健・医療・福祉のサービスを直接提供する
・サービス提供は期限なし(ただし不要になった場合には他サービスに引き継ぐ)
・必要な時に必要な場所で必要なサービスを提供する


ACTでおこなわれる支援サービス

どのような支援サービスをおこなうかは、どのような利用者を対象にするかによって異なります。また、利用者自身の意志を大切にするという考えから、利用者本人の主張をもとにした支援計画が個人ごとに作成されます。

ACTでおこなわれる支援サービスの例

・薬の処方と配達、通院の支援、受診同行・カウンセリング
・症状が悪化した時の介入や一時的な入院の間の支援
・身体的健康に関する支援・住まい探し、引越し、不動産業者とのやりとりなど住まいに関わる支援
・買い物や料理、交通機関の利用、近隣の方との関係づくりなど日常生活に関する支援
・仕事探し、企業訪問など就労支援・年金や生活保護の利用、金銭管理の助言などの経済的サービスに関する支援
・社会参加や地域での人間関係の回復や維持のための支援
・利用者の家族のための支援
・危機的な場面で症状に対処するための方法を検討  …etc.

日本で初めてのACT「ACT-J」

日本におけるACTプログラムの研究や実施については、国立精神神経センター・精神保健研究所と同センター国府台病院が中心となって取り組んできました。ここで研究されたACTプログラムは「ACT-J」と呼ばれています。この研究でも、入院日数が確実に減少するなどの成果が報告されています。

ACTの研究事業では個別の訪問支援を通じて、IPS(Individual Placement and Support Employment Program/個別職業紹介と支援)とよばれる就労支援プログラムや、家族に対するサポート(家族支援)、利用者同士の繋がりを促す支援(当事者活動支援)などが提供されてきました。そうしたサービスの研究と普及啓発活動、専門家・家族・当事者への研修、地域精神保健ネットワークの構築、海外の活動との連携など、さまざまな活動にも実績があります。

ACTIPS設立

ACTIPSは、この「ACT-J」としておこなわれてきた活動を継続し、なおかつACTの活動を全国に広げることを目的として設立されました。「ACT-J」プログラムは2008年4月から「訪問看護ステーションACT-J」として事業化し、ACTIPSの事業の中心となっています。実施にあたっては、国立国際医療研究センター国府台病院の医師と一緒にチームを形成し、就労支援や家族支援も含めた包括的な支援に取り組んでいます。

act-j

また、ACT-Jは、以下の理念をもって実施しています。

ACT-Jの理念

・利用者の可能性を信じ、彼らが希望を持ってリカバリーのプロセスを歩むよき伴走者となる
・チームの中でそれぞれの個性や職種の持ち味を生かしながら、協調して利用者の夢や希望の実現をめざす
・利用者の地域生活を準備する視点よりも、 地域生活を楽しむ視点を大切にする
・利用者を管理したり依存を助長させるのではなく、 自分の意志で取り組む力を育て(エンパワメント)自立を心がける
・利用者の障がいに焦点を当てるのではなく、 ストレングスを最大限に伸ばすことが出来るような実践を行う
・リカバリーの大切さを周囲に伝え、 リカバリーが実現しやすい地域作りに関与する