8.日本での実践に向けて

 ACTを日本に導入する意義については、ACTが頻回に入院するなど地域での生活が安定しない人たちの地域生活支援を目指していることから、重い精神障害を抱えた人たちの再発防止と生活の質の向上、治療サービスに対する満足度の向上だけでなく、平均在院日数の短期化、精神科病床の減少など様々な点で有意義な結果をもたらすであろうと考えられます。しかし日本の精神保健福祉と欧米のそれのあいだにはいくつかの差異があり、ACTを日本に導入する際には、これらの差異を考慮する必要があります。

家族との同居者が多い

日本では欧米に比べて地域で家族と同居している精神障害を抱えた人たちが多いため、退院後の生活支援において家族が積極的に介護者として機能しうることを示しています。同時に、家族が直接の介護のために多大な負担を背負う場合があることも意味しています。したがって、ACTの実施にあたっては、家族の負担の少ないグループホームの増設や、障害を抱えた人たちが独立して住むことを援助する住居支援サービスの徹底が必要でしょう。そして障害を抱えた人たちと家族が同居する場合には、家族に対する心理教育などの様々な支援が行われることが必須となるでしょう。

主治医・患者関係が医療の軸として存在する

ACTはチーム内に精神科医をおくので、チームが順調に動き出すと、利用者がチームの精神科医を主治医として選択し、処方などもチームの精神科医がおこなう可能性はあります。しかし、チームの外に利用者のかかりつけの主治医がいる場合が多いでしょう。主治医側もACTチームを信頼できなければ、主治医権を保つことが患者や家族のためになると考えるでしょうし、患者の側もいままでの治療関係に満足している場合は、主治医までも変えてACTのサービスを受けようとは思わないでしょう。したがって、チームと主治医との連携は活動の重要な部分になります。ACTがいかなるもので、どのように利用者のためになるか、ていねいに主治医と協議する必要があります。

日本と諸外国の異なる入院治療の実態

医療保険システムの異なる日本では、欧米なみに急性期の不安定な患者が1週間で退院することは、まだ考えにくいことです。充分なスタッフをそろえ、積極的に急性期医療を展開した場合でも30日‐50日程度の急性期入院は、妥当な治療的入院期間として考えられるでしょう。したがって、ACTを導入するにあたって、チームは、退院直後のケアを、欧米に対して割合余裕を持って対処できる可能性があります。
QOLをあげることができた人は、生活の安定も望めるので、いつまでも高密度のサービスを必要としなくなるかもしれません。ACTは元来、必要があれば一生でも続けるサービスでありますが、以上のような理由から欧米での基準にくらべて、終生ACTチームのケアを受ける必要があるものの割合をより低く設定できる可能性もあります。

費用・財政の確保

精神科医療費が低いために、日本のACTには入院費の高い欧米に比べて、入院費と同等の必要とされる可能性が高いと考えられます。




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